日本プライマリ・ケア連合学会
日本プライマリ・ケア連合学会

  1. HOME
  2. 学会について:総合診療専門医の6つのコアコンピテンシー推薦図書

総合診療専門医の6つのコアコンピテンシー推薦図書

 想像してみてください。もし、あなたの住む地域の古き良き雑貨屋さんがその「道」を極めようとしたら、どういう手段を取るでしょうか。きっと、お客さんの役に立つ商品を一生懸命探すでしょう。地域の人々の為人や生活をより深く知ろうとするでしょう。お客さんへの対応が上手くなるように努力し、訪れやすく商品を選びやすい店になるように手を加えるでしょう。プライマリ・ケアを実践する医師も同じです。患者を知り、地域を知り、病院・診療所を知ろうとします。それは、実践を通じた得がたい学びの連続です。
 ついでに、もう一度想像してみてください。その雑貨屋さんが、それらを文字で学ぼうと思い立ったらとしたら、どうでしょうか。何から手を付ければいいか、どこまで学べばいいか、途方に暮れるかもしれません。プライマリ・ケアも似た側面があります。果てしなく続くように見える道の入口に立ったとき、何を道標にしていいのかが分かりにくいのです。大人も子供も、慢性疾患も救急も、コミュニケーションも組織運営も、学びの対象範囲なのです。ですが同時に、たとえ国の制度や国民の認知度はまだこれからだとしても、プライマリ・ケアは医療の原点であり、グローバルな形です。そして、家庭医療学はそのもっとも重要な基礎なのです。
 本学会は、プライマリ・ケアに関心を持ち、学びたいと考えているすべての方のお役に立てるように、推薦図書のリストを作成しました。ぜひ一緒に、この国のプライマリ・ケアを担う仲間として歩んでもらいたいと願っています。

日本プライマリ・ケア連合学会

0.家庭医療全般

0.家庭医療全般(丸山 泉)
推薦図書 Thomas Freeman.Textbook of family medicine. 4th ed. Oxford University Press, 520p, 2016.
[邦訳:葛西龍樹、草場鉄周訳.マクウィニー家庭医療学上巻.ぱーそん書房、344p.2013年.(原著第3版)]
[邦訳:葛西龍樹、草場鉄周訳.マクウィニー家庭医療学下巻.ぱーそん書房、266p.2015年.(原著第3版)]
想定読者 ○初学者  ・  ○実践者  ・  ○指導者
解  説  家庭医療の父と言われる故Ian R. McWhinneyが初版から三版までを手がけたテキストの第四版である。第三版よりThomas Freemanとの共著となっており、彼がMcWhinney亡きあと、このテキストの素晴らしさをまもっている。McWhinneyは家庭医療というフィールドについて、様々な科にまたがる様々な疾病の診療を寄せ集めたものとしてではなく、その理論と実践を定義し独立した専門分野とせしめた人物である。
 本書のPartⅠ. Basic Principleには家庭医療のプリンシプル、家庭医療の哲学と科学的基盤、などについて記されており、他に類書がない内容となっている。家庭医療を実践する医師はすべからく読むべき書である。
推薦図書 John W. Saultz. Textbook of Family Medicine: Defining and Examining the Discipline. McGraw-Hill, 830p, 1999.
想定読者 ○初学者  ・  ○実践者  ・  ○指導者
解  説  Oregon Health & Science Universityの家庭医療学講座のprofessor/chairmanであるSaultz氏の書である。McWhinneyの書と同様に、最初のセクションには家庭医療のプリンシプルがまとめられている。SaultzはプリンシプルをACCCC(Access to Care, Continuity of Care, Comprehensive Care, Coordination of Care, Contextual Care)という形で紹介している。
 このテキストで秀逸なのは、各疾患についてのセクションである。その疾病に罹患することで、本人や家族にどのような変化や影響が生まれるかについて詳細に記載されている。本書は病いをもつ人の生活というものに想いを馳せることが、どれほど想像力を要することかを教えてくれる。本書から学べば、患者にかける声かけ、しておくべきケアに確実に変化が生まれるものと思われる。
 残念なことに、現在絶版となっており入手がやや困難である。
推薦図書 藤沼康樹編集.大川薫、廣岡伸隆、本村和久編集協力.新・総合診療医学 家庭医療学編、第2版.カイ書林、533p、2015.
想定読者 ○初学者  ・  ○実践者  ・  ○指導者
解  説  家庭医療学の原典は英語圏の書籍が中心であるが、本書は日本人の手による家庭医療学の網羅的な教科書である。通称赤本。「病院総合診療医学編」(青本)と対になっており、家庭医療の実践の基盤となる理論や、総合診療医の多様な役割、診療所でよくであう健康問題について学ぶのに役立つ。
推薦図書 葛西龍樹編著.スタンダード家庭医療マニュアルー理論から実践までー 永井書店、908p、2005.
想定読者 ○初学者  ・  ○実践者  ・  ○指導者
解  説  和書として最初に、家庭医療の理論と実践について網羅した一冊。改訂から時間を経ているため、臨床的知識についてはアップデートが必要であるが、理論部分は未だに色褪せることはなく、何より歴史的価値を有している。

1.人間中心のケア

1-1. 患者中心の医療の方法(草場 鉄周)


推薦図書 Stewart M, Brown JB, etc. Patient-Centered Medicine:Transforming the clinical method.3rd ed. Radcliffe Publishing, 442p, 2013.
(邦訳:山本和利監訳.患者中心の医療、第1版.診断と治療社、225p、2002年.)
想定読者 ○初学者  ・  ○実践者  ・  ○指導者
解  説  本領域の基本テキストであり必読の書と言って良い。患者中心の医療の方法のフレームワークが様々な事例と共に4つのコンポーネントとして丁寧に解説され、Illness(病気、病い)、Health(健康観)、Context(コンテクスト、背景)、医師・患者関係、決断の共有など、家庭医療を語る上で欠かせない用語の理解も深まる。また、この方法論が持つエビデンスの数々が示され、いわゆるEBMとの関係性、多忙な実診療での現実的な展開、更にチーム医療の中での実践のノウハウなどが応用的に語られる。次に、その教育法や研究手法についての解説も含まれ、実践者や指導者にとっても、教育や臨床研究など次のステップに進むためのヒントが豊富に掲載されている。
 邦訳はあるが、2版前のものであり、注意すべきである。


推薦図書 Brown JB, Stewart M, Weston WW. Challenges and Solutions in Patient-Centered Care. Radcliffe Publishing, 264p, 2002.
(邦訳:山本和利監訳.患者中心のケア ケースブック.診断と治療社、219p、2004年.)
想定読者 ○初学者  ・  ○実践者  ・  ○指導者
解  説  本書は、「Patient-Centered Medicine:Transforming the clinical method」の姉妹書である。基本テキストで詳細が説明された患者中心の医療の方法に関連する60もの豊富な症例とその解説が示されている。各ケースは患者中心の医療の方法の6つのコンポーネント(旧)に沿って分類されており、あるケースにどのように向き合うかについての具体的な記述を通して、重要な概念が浮き彫りになるだろう。
 邦訳もあり、基本テキストに入る前に、この症例集から学び始めることも可能だろう。また、指導者にとっては日々の症例から患者中心の医療を教育する際に、本書のケース&解説という枠組み自体が、教育にあたってのモデルになり得るので大いに参考にして欲しい。


推薦図書 Greenhalgh T, Hurwitz B. Narrative Based Medicine. BMJ books, 304p, 1998.
(邦訳:斎藤清二、山本和利、岸本寛史 監訳.ナラティブ・ベイスト・メディスン 臨床における物語と対話.金剛出版、310p、2001年.)
想定読者 ○実践者  ・  ○指導者
解  説  本書は、「Patient-Centered Medicine:Transforming the clinical method」の中で重要な要素として示された「Illness(患者の病いの語り)」を「Narrative(物語り)」という角度から捉え、概説した書である。本書の中核は「病いの物語り」にあるが、医療のシステム自体がある種の物語性を帯びていることを「医療における物語り」として示している。さらに、物語りの学習と教育や、理解を深めるためのプロセスなど、示唆に富む内容が独特のスタイルで記載されている。
 本分野は医療人類学という観点から深められることが多いが、本書はあくまでも英国の家庭医が現場の視点から記載しているという意味でも、我々にとってなじみやすく実践につなげやすい内容となっている。


推薦図書 Kleinman A. The Illness Narratives: Suffering, Healing and the Human Condition. Basic books, 302p, 1989.
(邦訳:江口重幸、五木田紳、上野豪志訳.病の語り 慢性の病いをめぐる臨床人類学.誠信書房、379p、1996年.)
想定読者 ○実践者  ・  ○指導者
解  説  本書は、患者の病いの語りを学ぶ上での原典にあたる書籍である。医療人類学の専門家である著者が収集した、慢性の病いをかかえた患者やその家族が肉声で語る多彩な物語で構成されている。例えば、「症状と障害の意味」「生きることの痛み」「死に至る病い」「心気症」など、日常診療の中で病の語りに特に深く向き合わなければならないテーマも少なくない。また、「治療者たち−医者をするという経験の多様性」では、私たち医師自身の内省につながる様々な事例とテーマが語られ、最後には「ケアするための方法」「医学教育と医療実践」も扱われ、指導者にとっての金言も散りばめられている。本領域を一歩掘り下げて理解したい方には、強くおすすめする名著である。
1-2. 家族志向の医療・ケア(松下 明)
推薦図書 松下明 監訳.家族志向のプライマリ・ケア.丸善出版、439p、2012年.
[原著:Susan H. McDaniel、Thomas L. Campbell、Jeri Hepworth、Alan Lorenz. Family-Oriented Primary Care 2nd ed. Springer, 500p, 2005.]
想定読者 ○初学者  ・  ○実践者  ・  ○指導者
解  説 家族志向のケアの世界的バイブルの邦訳。
家庭医と家族療法家によって書かれた、プライマリ・ケアの現場で必要となる家族の理解、家族とのかかり方などの基本原則に加えて、ライフサイクルに応じた家族への関わり、疾病に応じた家族への関わり、医師自身の家族と臨床への影響など多岐にわたる内容が網羅されている。初学者にはまずは以下の章を順番に通読することを勧める。

【後期研修1年目&2年目にまずはお勧め】
1.家族志向のプライマリ・ケアにおける基本原則
3.家族システムの概念:プライマリ・ケアにおいて家族を評価するツール
4.個人の患者に対する家族志向のアプローチ
23.現実社会における家族志向のプライマリ・ケア:包括的ケアの実践で考慮すべき事柄
24.急性期病院治療:家族を通じて
26.個人と職業人との境界をコントロールする:臨床家自身の経験をいかにして患者ケアに役立てるか

【後期研修3年目は上記に加えて以下も読破をお勧め】
2.家族は病気にどのように影響するか:研究結果から知る家族の健康に対する影響
5.日常診療への家族の参加
6.パートナーシップを築く:治療同盟と変容のためのモチベーションを促進する
7.プライマリ・ケアにおける家族面談技法:日常診療で家族に会うことから包括的家族カンファレンス まで
8.相互関係が難しい時
11.親を支援する:家族志向の子供のヘルスケア
13.思春期の家族志向型ケア
15.喪失を予期する:高齢者と介護家族のヘルスケア
16.死と向き合うこと:ターミナルケアと悲嘆のプロセスへの援助
18.慢性疾患への挑戦:向き合っていく家族と家族への援助
25.共同して働く:家族志向のメンタルヘルス専門家との連携・紹介

【実践者・指導者には全章を読破(専攻医と指導医と一緒に抄読会をすることをお勧め)して、自らの経験と照らし合わせて深めると良い】
推薦図書 草場鉄周 編集. 家庭医療のエッセンス.カイ書林、320p、2012年.
想定読者 ○初学者  ・  ○実践者  ・  ○指導者
解  説  北海道家庭医療センター指導医による力作で、家族志向のケアの章も秀逸。
 家族志向のプライマリ・ケアとは違った切り口での家族志向のケアを学ぶことができる。
推薦図書 松下明 編集責任.特集 家族面接 ─患者家族とかかわりあうコツ.メディカル・アライアンス. 2015年; 1(3): 222-227.
想定読者 ○初学者  ・  ○実践者  ・  ○指導者
解  説  総論では家族面接に焦点をあて、家族面接の5段階モデルや面接技法について解説あり、各論では様々な立場からの家族面接を展開しているため、より実践的なコツを学ぶことができる。一般急性期病棟、療養病棟、小児急性期病棟、診療所、訪問診療、リハビリ病棟、精神科など幅広い場面設定がある。面接技法そのものを深めたい人にはお勧め。
推薦図書 石川元ほか翻訳.ジェノグラム(家系図)の臨床:家族関係の歴史に基づくアセスメントと介入.ミネルヴァ書房、336p、2009年.
[原著: Monica McGoldrick, Randy Gerson and Sylvia Shellenberger.
Genograms : Assessment and Intervention, 2nd ed. 380p, 1999.]
想定読者 ○指導者
解  説  家族図についての世界的名著の翻訳。
 家族図を理解するレベルをより深めたい指導医にはお勧め。
 有名人の家族図を用いて家族図の読み方と書き方を深めることができる。
 家族療法家レベルの内容なので、日常診療に使うというよりも高みを知るという認識で読むことを勧める。
 
推薦図書
  1. Doherty WJ, Baird MA. Developmental levels in family-centered medical care. Fam Med 1986; 18:153-156.
  2. Marvel MK, Schilling R, Doherty WJ, Baird MA. Levels of physician involvement with patients and their families: a model for teaching and research. J Fam Prac. 1994;39:535-544.
  3. Medalie JH, Zyzanski SJ, Langa D,Stange KC: The family in family practice: is it a reality? J Fam Pract 1998;46:390-396.
  4. Madalie JH, et al. Two Physician Styles of Focusing on the Family. J Fam Pract 2000; 49: 209-15.
  5. Marvel MK, Doherty WJ, Weiner E. Medical interviewing by exemplary family physician. J Fam Prac. 1998;47:343-348.
  6. Cole-Kelly K, Yanoshik MK, Campbell J, Flynn SP. Integrating the family into routine patient care: a qualitative study. J Fam Pract 1998; 47:440-5.
想定読者 ○実践者  ・  ○指導者
解  説  家族志向のケアをより深め、指導の質を上げる上では上記の古典的論文に目を通すことをお勧めする。後期研修終了後にさらにこの領域を深めたいフェローにもお勧めの文献集である。
 最初の2つは家族面接の5段階モデルについての文献。
 次の2つは米国の家庭医療における家族志向のケアの実態調査。
 最後の2つは家庭医療における家族志向のプロがどんな診療をしているかについての質的研究で、目指すべき高みを見ることができる。
1-3. コミュニケーション(竹村 洋典)
推薦図書 飯島克己、佐々木将人翻訳.メディカルインタビュー 三つの機能モデルによるアプローチ、第2版.メディカルサイエンスインターナショナル、377p、2003年.
[原著:Steven A. Cole, Julian Bird. The Medical Interview. The Three Function Approach with Student Consult, 3rd Edition, Elsevier, 336p, 2013]
想定読者 ○初学者  ・  ○実践者
解  説  コミュニケーション技法について基礎から応用まで理論的に書かれた名著の日本語版。到達目標の言語的・非言語的なコミュニケーション技術、そして患者や家族との信頼関係の構築や共感的な態度を獲得するための必読書といえよう。さらに上級の医療面接にも詳細に説明があり、吸い込まれる内容である。この図書を熟読して頭を整理しておけば、いかなる応用も理解できると思われる。すべての総合診療の研修医に読破していただきたい。
推薦図書 草場鉄周監訳.Inner Consultation 内なる診療、第1版.カイ書林、402p、2014年.
[原著:Roger Neighbour. The Inner Consultation: How to Develop an Effective and Intuitive Consulting Style, 2nd Edition, Routledge, 292p, 2015.]
想定読者 ○実践者  ・  ○指導者
解  説  英国家庭医療学会(Royal College of General Practitioners)の元学会長ロジャーネイバー氏の名著。ほとんどの英国総合診療医が読んでいるかもれない。やや難解な文章もあるが、読めば読むほど、総合診療医にとっては味が出る。しかも心理社会的な知識の基盤がしっかりとしているため、安心して読むことができる。健康問題に対する患者の解釈、感情、医療者や予後に対する期待、問題による影響を適切に聴取するために必要な技能が満載されている。総合診療医が遭遇するさまざまな場面で使用する医療面接がとても興味深い。じっくりと読んでいただきたい。
推薦図書 林野泰明監訳.実践行動医学 -実地医療のための基本的スキル-、第3版.メディカルサイエンスインターナショナル、532p、2010年.
[原著:Mitchell D. Feldman、John F. Christensen. Behavioral Medicine in Primary Care. A practical guide. 2nd edition, McGrow-Hill, 382p, 2003.]
想定読者 ○実践者  ・  ○指導者
解  説  海外では多くの医療従事者に読まれていると思われるBehavioral Medicine -A guide for clinical practice- の日本語版。行動科学の著書ではあるが、患者をとりまく患者、家族、社会、文化的なコンテクスト理解しながらそれらを聴取するには最適な知識が含まれている。医療面接をする際に認識すべき心理社会的な内容のほぼすべてが網羅されている。特にスペシャルトピックは、代替補完医療や緩和ケアにおよび、非常に興味深く読める。全体に症例提示が豊富で総合診療の実際に即した内容が多い。特記すべきは分担著者があまりに有名で、かなり読みごたえがある。

2.包括的統合アプローチ

2-1. 未分化な問題、不確実性、複数の健康問題(藤沼 康樹)
推薦図書 Avril Danczak, Alison Lea, and Geraldine Murphy. Mapping Uncertainty in Medicine: What to Do When You Don’t Know What to Do? RCGP Press, 332p, 2016.
想定読者 ○指導者
解  説  包括的にプライマリ・ケアに関する不確実性の問題を解説している。
推薦図書 Joachim P Sturmberg. The foundations of primary care: daring to be different. Radcliffe Publishing, 217p, 2007.
想定読者 ○指導者
解  説  McWhinneyやGreenhalghと並んで,プライマリ・ケアや家庭医療学領域における最も先鋭的な理論家の一人による画期的なテキスト。複雑性の観点からプライマリ・ケアにあらたな光を当てている。
推薦図書 Mercer, Stewart, Chris Salisbury, and Martin Fortin, eds. ABC of Multimorbidity. John Wiley & Sons, 64p, 2014.
想定読者 ○指導者
解  説  多疾患併存:Multimorbidityはプライマリ・ケア研究において,現在世界的に最もホットなトピックであり,超高齢社会日本のヘルスケアを考えるうえでもキーワードに一つである。現時点では最も包括的なテキストである。
2-2. 地域を意識したマネジメントなど(前野 哲博)
推薦図書 David Smith著、生坂政臣監訳.早わざ外来診断術―疾患スクリプトに基づく診断へのアプローチ.中山書店、512p、2009年.
想定読者 ○初学者  ・  ○実践者  ・  ○指導者
解  説  本書は、主訴と徴候から診断名を正確かつ迅速に絞り込んでいくプロセスについて,可能な限り簡潔かつ大胆にまとめたアプローチ法により、診断の分岐点を見極める構成となっている. 中でも特徴的なのは、短いセンテンスで各疾患の臨床的特徴を端的に言い表した「疾患スクリプト」であり、ある程度のバリエーションにはあえて目をつぶり、疾患の本質を言い切ることで、症候および疾患の全体像を把握しやすくなっている。また、各症候の冒頭には想起すべき疾患のリストが記載されており、病歴や身体所見の感度・特異度・尤度比も見やすい表でまとめられているので、手際よく鑑別を進めていくことができる。
推薦図書 野口善令、福原俊一.誰も教えてくれなかった診断学 患者の言葉から診断仮説をどう作るか.医学書院、232p、2008年.
想定読者 ○初学者  ・  ○実践者  ・  ○指導者
解  説  臨床推論に関する理論を厳密に記述した本はあるが、やや難解で感覚的に理解しづらい部分がある。本書はまだ十分な臨床経験を積んでいない医師を対象として、「ベテラン医師は、そもそもどのように診断をつけているか? それは初期研修医とどのように違うのか?」という観点から、「カードを引く」という大変ユニークな説明法で、「頻度・確率」、「時間」、「アウトカム」の3つの軸を踏まえた臨床推論を、初学者にもわかりやすく解説している。
推薦図書 柴田寿彦、長田芳幸監訳.マクギーの身体診断学 改訂第2版/原著第3版 エビデンスに基づくグローバル・スタンダード.診断と治療社、576p、2014年.
[原著:Steven McGee. Evidence-Based Physical Daignosis. 4th edition, Elsevier, 736p, 2017.]
想定読者 ○初学者  ・  ○実践者  ・  ○指導者
解  説  臨床推論における身体所見の有用性はいうまでもないが、適切に判断を下すためには、それぞれの所見の持つ意義や、操作特性を踏まえた解釈が求められる。本書は、全身の身体所見を網羅し、それぞれについて発症機序、臨床的意義、感度・特異度・尤度比などの操作特性等の情報がまとめられており、臨床推論を学ぶうえで極めて有用な一冊である。
推薦図書 前野哲博、松村真司編集.帰してはいけない外来患者.医学書院、228p、2012年.
想定読者 ○初学者  ・  ○実践者  ・  ○指導者
解  説  本書は、初期研修を修了し、はじめて外来を担当する後期研修医を対象に、外来診療の最低条件と言える「帰してはいけない患者」を見逃さないためのポイントをまとめた本である。総論、各論、事例集の三章で構成され、総論では、臨床推論の基本的な考え方について、実践的な知識が平易な言葉でまとめられている。各論では、「帰してはいけない」患者の見分け方やgeneral ruleについて、各症候見開き2ページに収まるように、要点を簡潔にまとめている。事例集では、臨場感のあるカンファレンス方式で、臨床決断に至るまでの思考回路とクリニカルパールを提示している。これらを通して、外来診療で必要とされる臨床決断のプロセスが要領よく学べるように配慮されている。
2-3. 健康増進、予防、リハビリテーション(岡田 唯男)
推薦図書 小嶋 一、本村和久、徳田安春編集.Hospitalist(ホスピタリスト) Vol.3 No.2 2015(特集:外来における予防医療)メディカルサイエンスインターナショナル.200p、2015年.
想定読者 ○初学者  ・  ○実践者  ・  ○指導者
解  説  予防医療に関しての出版時点でのベストエビデンスをその背景も含めて包括的に解説されています。読みやすく、かつ内容の質が高いです。本誌は、米国のUSPSTFの推奨とその解説にとどまらず、当然日本の現状、ガイドラインの推奨は言うまでもなく、日米にとどまることなく、必要で重要なガイドラインを英国やその他の国の物も含め、Landmark Studyも適切に引用し、多面的多次元的に検討しています。
推薦図書 アンジェラ・ラッフル , ミュアー・グレイ.スクリーニング―健診、その発端から展望まで.同人社.256p、2009年
[原著:Angela E Raffle, JA Muir Gray. Screening: evidence and practice. Oxford University Press, 366p, 2007]
想定読者 ○実践者  ・  ○指導者
解  説  スクリーニングに関しての理論的背景を包括的に学ぶのに最適の書。本領域はジェネラリストの独壇場なので、できればこのレベルまで習得しておきたい。
推薦図書 岡田唯男編集.Gノート 2017年4月号 Vol.4 No.3 患者にきちんと届く! 届ける! 予防医療プラクティス.羊土社.174p、2017年.
想定読者 ○実践者  ・  ○指導者
解  説  予防医療については何をするべきか(What)は多くの良書やサイトが存在するためエビデンス-診療ギャップ(evidence-practice gap:EPG)をいかに解消するべきかの(How)にこだわって作成した特集です。何をやるべきかはわかっているけれど、なぜか患者さんレベルまで届けられていないのをどうすれば良いか?についての多くのヒントを提供できると思います
推薦図書 福田洋、江口泰正編集、中山和弘著.ヘルスリテラシー:健康教育の新しいキーワード.大修館書店.168p、2016年
想定読者 ○初学者  ・  ○実践者  ・  ○指導者
解  説  ヘルスリテラシーの第一人者達が書いてあるだけあって、読者のリテラシーに十分配慮して書かれており、すっと読めます。医療をやる上で、こちらの意図する医療が受益者に認識され、理解され、実行されるための効率を下げない、損失を減らす(エビデンスパイプラインと呼んでいます)ためには、伝え方、巻き込み方が重要であり、その理論的基盤についてはあまりにも知らないことが多すぎた、というのが読んでからの印象です。
 
 根拠となっている論文の引用も多く、現在の標準的なヘルスリテラシーの評価方法、ヘルスリテラシー理論のトレンド、主要理論など網羅性も高いです。百歩譲って、"ask me three" の取り組みをしらないと医療者として恥ずかしいかもしれません。
推薦図書 東京大学医学部健康総合科学科編集.社会を変える健康のサイエンス:健康総合科学への21の扉.東京大学出版会.148p、2016年
想定読者 ○実践者  ・  ○指導者
解  説  この本も健康総合科学というカテゴリーの元、健康に関わる要素のいかに多いことが認識させられる良書。診察室の外、社会として人の健康を考える際に考慮すべき幅広いテーマについて取り上げられている。家庭医療の専攻医は持っておいても良いのでは。
推薦図書 若林秀隆編集、岡田唯男、北西史直編集協力.その患者さん、リハ必要ですよ!!〜病棟で、外来で、今すぐ役立つ!評価・オーダー・運動療法、実践リハビリテーションのコツ.羊土社.270p、2016年.
想定読者 ○初学者  ・  ○実践者  ・  ○指導者
解  説  この本のおすすめポイントは、以下の2点に集約されます。
*非リハビリテーション専門医(家庭医、総合診療医、初期研修医など)向けにリハビリテーションの基本的な内容がまとめられている
*疾患、病態ごとの各論(入院、外来両方)はもちろん、リハビリをオーダーする際の考え方、注意点、基礎知識などの総論もカバーするにとどまらず、さらには、なぜリハビリが総合的に患者を診療する観点から不可欠なのか、ジェネラリズムとどのように共通しているのかなどの哲学的、精神的総論までカバーしている
2-4. 継続性(葛西 龍樹)
推薦図書 葛西龍樹、草場鉄周翻訳.マクウィニー家庭医療学上巻.ぱーそん書房、25-28p、2013年.
[原著: Thomas Freeman.Textbook of family medicine. 4th ed. Oxford University Press, 520p, 2016]
想定読者 ○初学者  ・  ○実践者  ・  ○指導者
解  説  本書は、臨床医学の実践・教育・研究・思索に基づいて家庭医療学の専門性の中心に位置する「患者中心の医療の方法」を発展させるなど、家庭医療学を臨床医学の専門分野として確立させた世界の家庭医療学のバックボーン、カナダ・ウェスタンオンタリオ大学のIan R. McWhinney名誉教授による家庭医療学教科書の決定版Textbook of Family Medicine第3版(2009)の日本語版である。ケアの継続性については、第2章「家庭医療学の原理」の中で論じられている。「責任は、すべての重要な人間関係における鍵なのです。」「個々の人への人間的なケアに置かれる価値は、診療所がどのように組織されているかに反映されます。」などの意味を深く考えて、私たちの実践に加えたい。
推薦図書 日本プライマリ・ケア連合学会『メディカル・ジェネラリズム』翻訳チーム 翻訳.メディカル・ジェネラリズム:なぜ全人的医療の専門性が重要なのか. 14-17p、2016年.
https://www.primary-care.or.jp/imp_news/pdf/20160721.pdf
(Accessed Dec 22, 2016)
想定読者 ○初学者  ・  ○実践者  ・  ○指導者
解  説  本書は、世界家庭医機構(WONCA)会長になった英国家庭医学会(Royal College of General Practitioners; RCGP)のAmanda Howe教授をリーダーとしてまとめられた、新時代のジェネラリズムを深く考察するために重要な文献Medical Generalism: Why expertise in whole person medicine matters(RCGP, 2012)の日本語版で、全文が日本プライマリ・ケア連合学会ホームページで公開中である。
 「ケアの継続性と協調性」の議論は、第3章「メディカル・ジェネラリズム:影響と限界」の中にある。ケアの継続性の3つの重要な論点として、縦断的なケア、サービス間の境界を越えた協調性(または統合性)、プライマリ・ケアにおける24時間ケアを挙げている。「ジェネラリズムの隠れた手」とは何か。ぜひ理解してその有用性を確認して欲しい。
 
推薦図書 Maarsingh OR、Henry Y、van de Ven PM、Deeg DJH.Continuity of care in primary care and association with survival in older people: a 17-year prospective cohort study.British Journal of General Practice.2016; 66(649): e531-9.doi: 10.3399/bjgp16X686101
想定読者 ○実践者  ・  ○指導者
解  説  継続性はプライマリ・ケアにおいて重要な原理だと考えられているが、その有益性を示したエビデンスはまだ質量ともに乏しい。そんな中で、本研究は、家庭医療・総合診療でのケアの継続性(COC)が高齢者の生存とどう関連するかを検討するために、60歳以上の高齢者1,712人を17年間追跡したオランダのコホート研究である。COCはHerfindahl-Hirshman Indexを用いて計算した。対象高齢者の43.3%が最高のCOCを示し、17年間生存した高齢者759人のうち33.1%がなお同じGP(家庭医・総合診療専門医)を受診していた。最低のCOCを示した人たちは最高のCOCの人たちと比較して有意に高い死亡率を示した[hazard ratio 1.20, 95%CI: 1.01 - 1.42]。

3.連携重視のマネジメント

3-1. 多職種連携(吉村 学)
推薦図書 埼玉県立大学 編集.IPWを学ぶ:利用者中心の保健医療福祉連携、中央法規出版、224p、2009年.
想定読者 ○初学者
解  説  わが国でいち早くIPE(interprofessional education)を導入した埼玉県立大学による教科書。英国の流れやわが国における可能性、卒前教育を中心とした地域展開についても詳しい。
 プライマリ・ケアを地域で実践していく中で連携についていかに学び、いかに教育していくかが今後の鍵とも言えるのでぜひこの本を手にとって学び初めていただきたい。
推薦図書 Institute of Medicine. Measuring the impact of inter-professional education on collaborative practice and patient outcomes. The National Academies Press, 182p, 2015.
想定読者 ○指導者
解  説  米国から発表されたIPEに関する報告書。特に評価についてこれまでの文献などをレビューして、課題を抽出しつつ今後の課題を具体的に示している。IPEに関する研究や教育を考えている指導者にとっては有用な資料となる。
推薦図書 井階友貴編集.もっと踏み込む 認知症ケア.Gノート.2016年; Suppl 3(6):918-1214.
想定読者 ○実践者
解  説  多職種連携の実践や地域展開、さまざまなことについて考えるときに具体的に考えたほうがよいので、この本を推薦します。プライマリ・ケアの現場で認知症の患者さんや家族に関わっているさまざまな分野の方々が執筆されています。学問的なことだけでなくコツや落とし穴についても取り上げられています。実践編として学ぶ際にとても参考になると思います。
3-2. 病診連携など(井村 洋)
 
推薦図書 埼玉県立大学 編集 「IPWを学ぶ 利用者中心の保健医療福祉連携」 序章、第一章、初版.中央法規、2009年.
想定読者 ○初学者  ・  ○実践者  ・  ○指導者
解  説  プライマリ・ケアに従事していると、他施設、他部門、多職種との接触は日常である。その結果「連携できている」と感じるようになっている。しかし、いったん立ち止まり、「何故連携が必要なのか」「どのような連携があるべき姿なのか」と熟慮する機会を持つことも、大事なことであろう。
 「連携と統合は、複雑な保険医療福祉に対するニーズに対応するための手段である」と明言している本書の、序章「なぜ今、連携なのか」および、第1章「IPW/IPEの理念とその姿」は、そのことを考える際に思考の補助線になりうる。
推薦図書 田代孝雄 編集.地域医療連携 生き残るための戦略と戦術、第一章 地域医療連携室ってどんなところ.SCICUS(サイカス)、2-23p、2009年.
想定読者 ○初学者  ・  ○実践者  ・  ○指導者
解  説  組織間連携は医師同士の連絡だけでは完結できない。研修病院で診療に邁進していると、医師だけで連携しているような気分になるが、その背景には、必ず堅実な連携システムが存在している。
 本書の第一章では、地域医療連携室の構成、活動・機能・特徴、地域連携パスの取り組み、活動成果について紹介しており、地域医療連携室の役割を認識することの参考になる。
 第二章では、3疾患(循環器、がん、脳卒中)の疾患別連携パスを利用した連携の取り組み、糖尿病医療連携先進地域の取り組み、在宅医療の地域連携について紹介している。
 最後に、各々の連携の基盤として重要な地域ネットワーク作りについて述べている。
推薦図書 吉本 尚 編集.チャレンジ多職種連携.115p、2013年.
http://ipeipw.org/files/IPE2014-01_116.pdf
(Accessed Dec 22, 2016)
想定読者 ○初学者  ・  ○実践者  ・  ○指導者
解  説  高齢者医療をはじめ、緩和ケア、小児ケア、精神科ケアなど、様々な連携の領域・現場を具体的に紹介している。さらには、多職種連携の仕事内容について、様々な現場(施設、行政、診療所、病院など)における、関連する全職種の代表者から、それぞれの立場で行う仕事内容の記述があるため、各職種の役割と働きぶりについて、連携に直接関与したことがない者でも、認識することができる。
3-3. 組織全体のマネジメント(質改善含む)(西村 真紀)
推薦図書 訳:日本プライマリ・ケア連合学会 翻訳チーム、監訳:松村真司、福井慶太郎、山田康介ら. 家庭医療の質、診療所で使うツールブック、第一版、カイ書林、212p、2015年
想定読者 ○初学者  ・  ○実践者  ・  ○指導者
解  説  この本は、カナダのオンタリオ州、マクマスター大学家庭医療学科のグループによって出版されたものを日本プライマリ・ケア連合学会内のチームが翻訳したものである。日本では病院での医療の質や安全に関する指標は各病院、学会レベルで整備されてきている。しかし診療所での指標は皆無と言ってよい段階である。この本では家庭医が提供する医療の要素を8つのカテゴリー(患者中心性、公平公正性、適時性と近接性、安全性、効果的な診療、効率性、統合ケアと継続性、適切な診療所リソース)に分けており、さらにサブカテゴリーに分け、それぞれに対する医療の質の指標を提示している。ツールブックなので、各項目のページが分かれていて大変見やすく作られている。読者の自施設での質と安全をチェックするのと同時に、施設の基準を見直したり追加したりするのに役立ててほしい。
 
推薦図書 井村洋.〔連載〕医長のためのビジネス塾(1)~(16).医学界新聞.2009年-2010年;2818-2885号
https://www.igaku-shoin.co.jp/paperSeriesDetail.do?id=122
(Accessed Dec 19, 2016)
想定読者 ○実践者  ・  ○指導者
解  説  経営、企業戦略に関する井村先生のシリーズで医学書院の医学界新聞に連載されたもの。井村先生が中間管理職になったころに社内研修で経験したことをもとに書かれている。マーケティング、企業戦略、論理的思考、財務分析、ファイナンスなど、医学部でも研修でも医学書でも誰も学べなかった、しかし知らないわけにはいかない内容である。研修病院の指導医としての立場から企業戦略や論理的思考を医師研修に当てはめて考えるなど、とっつきにくい分野なのに理解しやすい。井村先生自身が第1号で書かれている言葉をそのまま記す。「これまで経営などには全く無縁で、臨床医として精進してきて生涯一医師を貫くつもりだった。しかし、年齢を重ね気がつくと中間管理職の一歩手前になっている。このままでいいのだろうか?」という疑問や不安を感じている方の役に立つ連載である。
推薦図書 小西竜太、藤沼康樹、編集.医療マネジメント能力、ジェネラリスト教育コンソーシアムvol4.カイ書林、190p、2013年.
想定読者 ○実践者  ・  ○指導者
解  説  ジェネラリストコンソーシアムという討論会での内容とそれに関連する論文が書物になったもの。総合診療医に求められる医療マネジメントに関するレクチャーに続き、家庭医のケース、開業のケース、病院総合医のケースが紹介されている。論文としては診療所、病院の経営、リーダーとしての人を動かすマネジメント能力、チームマネジメント、個人のタイムマネジメント、講師としてのマネジメント、専攻医のモチベーション維持の方法に至るまで様々な場面でのマネジメント能力について知ることができる。各著者は自分のマネジメント経験を文献的考察も交えながら深く掘り下げて解説しておりいきいきと内容が伝わってくる。一般のマネジメント理論のビジネス書とは違い、現場の医師の視点で書かれているため、それぞれの立場の読者が今必要な能力について学ぶことができ、やる気の出る一冊である。

4.地域志向アプローチ

4-1. 地域の健康福祉行政などへの参画(大橋 博樹)
推薦図書 大橋 博樹編集.医師のための介護・福祉のイロハ〜主治医意見書のポイント、制度・サービスの基本から意外と知らない多職種連携のあれこれまで (Gノート別冊).羊土社、263p、2016年.
想定読者 ○初学者  ・  ○実践者  ・  ○指導者
解  説  地域包括ケアの現場に入っていきたい、健康福祉行政への参画をしたいと考えていても、その制度がわからなければ医師であっても不可能である。地域包括ケアのステークホルダーの中では、患者を除けば、医師が制度について一番不得手としていると言っても過言ではない。本書は、介護福祉制度の基本から解説し、多職種連携における必須キーワードが理解できることを目標としている。
推薦図書 永井康徳 著.たんぽぽ先生の在宅診療報酬算定マニュアル、第4版.日経BP社、268p、2016年.
想定読者 ○初学者  ・  ○実践者  ・  ○指導者
解  説  在宅医療において、外来診療や入院診療と最も異なり複雑なのが、診療報酬制度である。特に在宅では医療保険の他に介護保険の請求もあり、訪問看護などはそれが一部重なる部分もあるため、理解を困難にしている。とはいえ、在宅診療における診療報酬は高額であり、患者の自己負担も大きいことから、ケアを提供するものとしては、しっかり会得しておかなければならない知識である。本書では、在宅医療の最前線にいる医師が現場目線で必要な項目に優先度をつけて解説している。在宅に関わる人には必読の一冊である。
推薦図書 佐々木 淳 著.これからの医療と介護のカタチ〜超高齢社会を明るい未来にする10の提言〜.日本医療企画、252p、2016年.
想定読者 ○初学者  ・  ○実践者  ・  ○指導者
解  説  在宅医療の現場から数多くの発信を行っている著者の対談集である。これまでに経験したことのない人口減少と超高齢化という問題に対して、どのような角度からどのようにアプローチすべきか、様々な角度からその専門家を交えた熱い議論が展開されている。その内容は「アドバンスケアプランニング」や「認知症になっても困らない社会」、「人生の最終段階を生きる人に伴走する」、「高齢者の「生きる」を支える地域」など大変興味深いテーマばかりである。今最も重要な課題は何か?自分の中で見つめ直すために、是非一読をお勧めする。
推薦図書 高山 義浩 著.地域医療と暮らしのゆくえ: 超高齢社会をともに生きる. 医学書院、198p、2016年.
想定読者 ○初学者  ・  ○実践者  ・  ○指導者
解  説  厚労省の医系技官として活躍をされた著者が、臨床医として沖縄県に再赴任し、地域の現場、特に過疎地・島の医療に真摯に取り組む姿が記録されている良書である。地域包括ケアの現場の最前線を体験しながら、ただナラティブになるだけではなく、急速な高齢化と医療費増大が見込まれる中にあって、これまでの「病床を増やす」という考え方では限界がきているという強いメッセージが盛り込まれている。解決策が提示されないまでも、今後を考える重要な論点提示として、大変貴重な一冊である。
4-2. 地域の健康問題への対応(雨森 正記)
推薦図書 自治医科大学 監修.地域医療テキスト.医学書院、206p、2009年.
想定読者 ○初学者  ・  ○実践者
解  説  自治医科大学地域医療学センターが中心となり、同大学の卒業生、教職員などが執筆しており、診療だけでなく地域で医療を行う上で必要なヘルスプロモーション活動、保健福祉活動、多職種との連携、行政とのかかわりについてわかりやすく解説している。後半には実際に地域医療を実践している医師の生活を日記・物語形式に書いてあり、医学生などの初学者にも読みやすくなっている。初学者、地域に赴いた実践者に是非とも読んで頂きたい図書である。
推薦図書 神馬征峰翻訳.ヘルスプロモーション-PRECEDE-PROCEEDモデルによる活動の展開-.医学書院.361p、2005年.
[原著:Lawrence W Green, Marshall W Kreuter. Health Program Planning: An Educational and Ecological Approach. 4th edition, McGraw-Hill Humanities, 600p, 2004.]
想定読者 ○実践者  ・  ○指導者
解  説  ヘルスプロモーション活動を行う上で重要なPRECEDE—PROCEEDモデルついての書物である。PRECEDE(Predisposing, Reinforcing, enabling constructs in Educational/Environmental Diagnosis and Evaluation 教育環境の診断と評価のための前提・強化・実現要因)と呼ばれる診断の5段階、PROCEED(Policy, Regulation, and Organizational Constructs in Educational and Environmental Development教育環境の開発における政策的・法規的・組織的要因)と呼ばれる実践と評価の4段階について詳細に解説されている。ヘルスプロモーション活動を深く追求する際には知っておいていただきたい理論である。
推薦図書 公益社団法人地域医療振興協会 編集.今こそ、地域医療! メディカルサイエンス社.226p、2016年.
想定読者 ○初学者  ・  ○実践者
解  説  地域医療に実際に従事した自治医大卒業生の各地での実践報告と、今後の地域医療における総合診療専門医の可能性について書かれている。特に地域医療を行う上で通常の外来診療以外の地域の健康問題、まちづくりに参画した経験が綴られており、地域医療を行う上で参考になると思われる。

5.公益に資する職業規範

5-1. 倫理性・説明責任(大西 弘高)
推薦図書 赤林朗, 蔵田伸雄, 児玉聡 翻訳.臨床倫理学―臨床医学における倫理的決定のための実践的なアプローチ、第5版.新興医学出版社、270p、2006年.
[原著:Albert R. Jonsen, Mark Siegler, William J. Winslade, Clinical Ethics: A Practical Approach to Ethical Decisions in Clinical Medicine, 7th edition, McGraw-Hill Education, 240p, 2010.]
想定読者 ○初学者  ・  ○実践者  ・  ○指導者
解  説  臨床倫理の4分割表で有名なジョンセンの臨床倫理学である。難しい概念についても具体的な事例を用いて触れられているため、初学者から指導者のレベルを通じて利用価値が高い。なお、現在第5版となっているが、最初に翻訳出版(1997年)されたのは第3版である。このとき、原書には4分割表はなかったが、翻訳に添付され、原書も第4版から4分割表が付いたというエピソードがある。章立ては、第1章「医学的適応」、第2章「患者の意向」、第3章「クオリティー・オブ・ライフ」、第4章「周囲の状況」、第5章「小児科と産科の倫理」となっており、4分割表にある程度親しみを持つ読者には、1~4章のそれぞれが4分割表の見出しに該当するため、おそらく読み進めやすいのではないかと思われる。
推薦図書 宮崎仁、尾藤誠司、大生定義 編集.白衣のポケットの中一医師のプロフェッショナリズムを考える.医学書院.2009
想定読者 ○初学者  ・  ○実践者  ・  ○指導者
解  説  臨床家の現場でみられる医師のプロフェッショナリズムの問題をとり上げた書籍。ここまでざっくばらんに、それでいて一定のまとまりを持って書かれた書籍は類を見ない。例えば、米欧内科3学会による「新ミレニアムにおける医のプロフェッショナリズム:医師憲章」やSternの「Measuring medical professionalism」はこの領域で必読文献だが、これらに関する解説もコンパクトに入れられている。事例が多く含まれるが、それぞれのエピソードについて複数の著者が関わり、読み進めながら考えの多様性を理解できる構成になっている点も工夫の1つであろう。臨床倫理、利益相反といった内容にも踏み込んでいる。さらに、患者からの謝礼、要求、クレームなど、患者-医師関係の問題にも鋭く斬り込んでいる。
推薦図書 大磯義一郎、加治一毅、山田奈美恵.医療法学入門.医学書院.2012
想定読者 ○初学者  ・  ○実践者  ・  ○指導者
解  説  説明責任を果たし、よりよい医療を行っていく上で、法的な枠組みに関する理解も重要である。患者の権利意識が高まってきたことで、訴訟に対する不安を抱える医師、診療所・病院開設者もいるかもしれない。医療関連の法律について全体像を理解することを通じ、司法関係者と医療側がよりよい医療を目指して改善を図っていきたいという熱意を持って出版された書籍と言えそうである。多くの専攻医や指導医には、日常的な診療に直接関係しない内容ではあるだろうが、何か法的なトラブルなどに巻き込まれたとき、相談されたときには、きっと読んでいてよかったと思えるに違いない。
5-2. ワークライフバランス(大野 毎子)
推薦図書 小室淑恵.ワークライフバランス-考え方と導入方法-、初版.日本能率協会マネジメントセンター、267p、2007年.
想定読者 ○実践者  ・  ○指導者
解  説  ワークライフバランスをメインとした組織人事コンサルタントとして実績のある著者による改革の推進担当者向けにかかれた実務的な入門書である。特に、基本事項がかかれたpart1では、言葉の定義、日本や各国での経緯、戦略的意味などが十分理解できるように書いてある。また、実践事例の掲載も豊富で、8つのステップに沿った導入方法も親切な内容である。最後のパートにある実務で役立つデータ30は周囲に理解を求めて推進していくうえで必須のデータがまとめられており、データベースを追跡すれば、最新のデータが得られるので、常に説得力のある資料として活用できるだろう。
推薦図書 書中野円佳.「育休世代」のジレンマ 女性活用はなぜ失敗するのか?、初版.光文社、349p、2014.
想定読者 ○初学者  ・  ○実践者  ・  ○指導者
解  説  著者自身が子育てをしながら行った研究をもとにかかれたが分析的な内容の本である。研究テーマは産休・育休や育児支援の制度が整ったようにみえる現在において、総合職に就職した女性の多くが出産や育休をへて退職してく現状を分析している。丁寧に記述される個々人の姿と全体を分析することでみえてくる社会の構造的な問題が明らかにされている。企業の女性の総合職が扱われているが、そのまま医師やそれを取り巻く環境に重なるところが多く、大いに参考になる。
推薦図書 西村真紀、村田亜紀子 編集幹事.特集ライフキャリア・サバイバル 女性医師が生きやすい社会を目指して.治療.2015年;97(12): 1645-1795.
想定読者 ○初学者  ・  ○実践者
解  説  総論とロールモデルからのメッセージで構成されるが、女性医師の多様なキャリアについて掲載されているので学生、研修医、若手の医師がキャリアについて思いを巡らすとき、ぜひ一読していただきたい。コラムなどで取り扱われている内容も、制度や法律を踏まえた実践的な内容で、読み応えがあり、特集のタイトルにあるようにサバイバルするための、ヒントが満載な号となっている。
5-3. 教育と研究 (1)-(3) 医学教育(大滝 純司)
推薦図書 日本医学教育学会. 医学教育白書2014年版. 篠原出版新社、332p、2014.
想定読者 ○初学者
解  説  日本医学教育学会が4年に一度発行している「白書」である。医学教育学会の会員による分担執筆で構成されている。医学教育の現状に関する情報が、トピック毎にわかりやすく、比較的簡潔にまとめられている。日本国内の医学教育を中心に、幅広い領域について記述されており、その現状を俯瞰するのに役立つ。バックナンバーは過去の資料としても貴重であり、読み比べることで、医学教育の変化を把握できる。
推薦図書 鈴木康之、錦織宏監訳.医学教育の理論と実践.篠原出版新社. 520p、2010.
[原著:John A.Dent、Ronald M.Harden . A Practical Guide for Medical Teachers, 4th Edition, Elsevier, 456p, 2013.]
想定読者 ○実践者
解  説  医学教育に携わる教員向けの国際標準の教科書として広く知られている、A Practical Guide For Medical Teachersの第2版の翻訳である。執筆陣には医学教育の国際的権威が名前を連ね、丁寧な日本語訳と相俟って有用な参考資料となっており、日本の医学教育関係者から高く評価されている。カリキュラムの開発、教育の方法、各種の評価、指導者の養成など、具体的で実践的な内容が網羅的に記載されている。医学教育について疑問があれば、まずはこの本にあたってみることをお勧めする。原著の方は既に第4版になっているので、最新の知見を確認したい場合はそちらも参照していただきたい。
推薦図書 田邊政裕. アウトカム基盤型教育の理論と実践. 篠原出版新社. 150p、2013.
想定読者 ○指導者
解  説  教育カリキュラムの新しい理論として普及しつつある「アウトカム基盤型教育」について、その日本への導入に先進的に取り組んできた千葉大学(当時)の田辺教授の編集による解説書である。基本的な考え方から、実際のカリキュラム構築の方法や具体例までが記述されている。アウトカム基盤型教育の考え方は、日本の卒前教育や卒後教育にも広まりつつある。この本を参考にすることで、「アウトカム」「コンピテンシー」「マイルストン」など、耳慣れない用語についてその意義から利用方法まで理解することが可能になる。
推薦図書 佐藤学. 教育の方法(放送大学叢書). 左右社. 200p. 2010.
想定読者 ○初学者  ・  ○実践者  ・  ○指導者
解  説  「医学教育」は「教育」の一分野であるが、かなり特殊な面が多い。医学部入試、医学部・医科大学での教育、医師国家試験とその対策、初期臨床研修、大学院での教育と医学博士、専門医、いずれにも独特の制度や歴史や社会的関連事象があり、教育の一般的な考え方をそのまま適用し難いことも多い。医学教育に携わる者には、医学教育の特殊性を相対化し教育に関する広い視野を持つことも重要だろう。そうしたことに気づかされる本の一つが本書である。著者の佐藤学氏は、学校現場でのフィールドワークで知られる著名な教育学者であり、reflective practitionerという新たな専門家像を日本に紹介した。
5-3. 教育と研究 (4)-(5) 臨床研究(福原 俊一)
推薦図書 萱間真美. 質的研究のピットフォール: 陥らないために/抜け出るために. 医学書院、119p、2013.
想定読者 ○初学者
解  説  質的研究を初めて計画・実施する初学者に最適な本である。個々の研究手法について詳しく書かれている訳ではないが、迷った時のガイドブックとして手元に置いておきたい。研究テーマの決定、研究計画の立案、データ収集、分析、論文執筆といった研究の道のりにおいて、陥りやすい失敗とその対処法を、著者の経験に基づいて実践的に解説している。また研究指導者が質的研究の指導に当たる中で感じる本音も包み隠さずに書かれており、研究指導初心者が自身の役割を学ぶ上でも有用と思われる。
推薦図書 小田博志,山本則子,春日常 翻訳.質的研究入門―“人間の科学”のための方法論. 春秋社、670p、2011.
[原著:Uwe Flick. An Introduction to Qualitative Research. 5th edition, SAGE Publication, 616p, 2014.]
想定読者 ○初学者  ・  ○実践者
解  説  質的研究の理論的背景(量的研究との対比を含め)や歴史、倫理的問題、質的研究における先行研究の利用法、具体的な研究手法、質的研究の質の評価、複数の手法の統合まで網羅した優れた教科書。入門書という位置付けではあるが、内容は包括的かつ詳細にまで及び、初学者のみならず研究経験のある実践者にも有用である。文献リストも充実しているため、学びを深める上でも役立つ。
推薦図書 福原俊一. 臨床研究の道標. 特定非営利活動法人 健康医療評価研究機構、 280p、2013.
想定読者 ○初学者  ・  ○実践者
解  説  臨床研究デザインの本質を物語形式でわかりやすく解説した量的研究の教科書。臨床研究においてデザインがいかに重要か明確に示されている。研究デザインに必要な7つのステップについて、基礎を広く、また時に深く解説されている。また臨床研究に苦手意識がある読者であっても、効果的なレイアウトや図表が理解を助けてくれる。これから臨床研究に取り掛かる初学者に最適であると同時に、臨床研究の経験がある実践者が研究デザインの知識をブラッシュアップする上でも有用である。

6.診療の場の多様性

6-1. 外来医療(伴 信太郎)
 
推薦図書 U.S. Preventive Services TASK FORCE
https://www.uspreventiveservicestaskforce.org/Page/Name/home
(Accessed Dec 27, 2016)
想定読者 ○指導者
解  説  外来診療では、予防医療についての知識が必須である。その根拠資料として最も信頼できるリソースの一つがUSPSTFからの情報である。このホームぺージのRecommendationsのタグをクリックすると、これまでエビデンスに基づいて検討された様々な推奨を読むことができる。推奨の程度は、Aの「強く予防が奨められる介入」からA、B、C、D、Iの5段階で示される。
 たとえば「アルコール問題のスクリーニングと介入はどうすればよいか?」という臨床的疑問については、USPSTFの推奨は2013年に出されており、18歳以上の人にはB(推奨)、18歳以下はI(根拠は不十分)とされていて、推奨の全文参照をクリックすると文献(Ann Intern Med. 2013;159:210-218.)がダウンロードできる。指導者は必見と言ってよいだろう。
推薦図書 伴 信太郎、生坂 政臣、橋本 政良 編集.総合診療専門医マニュアル、第1版.南江堂、2017年出版予定.
想定読者 ○初学者  ・  ○実践者
解  説  新しい専門医制度の発足を睨んで編集された総合診療専門医研修のためのマニュアルであるが、実践者にとっても十分役立つ内容となっている。小児~高齢者までの診療サポートができるように以下のような章立てになっている。
Ⅰ. 症候別診断編
Ⅱ. 年代別・性別診断編
Ⅲ. 応用編
Ⅳ. 総合診療専門医のための基礎知識
付録. 専門研修カリキュラムとの対応表
 症候別では、‘Red Flag Sign’や頻度別に疑うべき疾患を整理するなど、病態生理と臨床疫学の両輪を意識した編集で、外来診療に特化したものではないが、必携と言ってよい。
推薦図書 生坂政臣.めざせ! 外来診療の達人- 外来カンファレンスで学ぶ診断推論、第3版.日本医事新報社、232p、2010年.
想定読者 ○初学者  ・  ○実践者  ・  ○指導者
解  説  学生・研修医時代に病棟診療を中心とした基本的臨床能力を学んだ医師は、外来診療に従事する前に是非とも呼んでおいてほしい教科書である。
 外来診療は短時間の間に病歴をまとめ、そこから推定される病態を絞り込み、または除外するための身体診察を行い必要ならば検査を追加するというプロセスが求められる。また外来診療における事前確率は入院患者とは当然異なるのみならず、外来診療の場の違いによっても大きく異なる。このような外来診療をどのように実践すれば効率的かつ効果的な診療を実践できるかということを的確に学ぶことができる。
 まず冒頭の16ページにコンパクトにまとめられている臨床推論の基本を読んで、次いで症例を数例みて、またもう一度臨床推論の基本を読んでみるという学習を繰り返すと、臨床推論の基本がいつの間にか身についていると思われる。病歴の重要性も実感できると思う。Semantic qualifier(SQ)、Illness Script(IS)などの概念も是非学んでほしい。
6-2. 救急医療(齊藤 裕之)
推薦図書 松原知康 著.動きながら考える!内科救急診療のロジック、初版.南山堂、225p2016年.
想定読者 ○初学者  ・  ○実践者  ・  ○指導者
解  説  内科救急の系統的な診療方法(preparation、pre-Primary survey、Primary survey、Secondary survey)を中心に話が展開し、この本のロジック通りに行うことで、現場におけるエラーが減り、当たり前のことを当たり前のようにできるようになる。プロブレムの優先順位のつけ方など、あまり教わらない事に関してもロジックに沿って分かりやすく解説がされている。普段なんとなくしている行動や思考についてわかりやすく言語化して整理できるため、自分の診療を省みたりフィードバックにも用いることができるので指導者にとっても必読である。各論は読んでいてその場にいて実際に実践している感覚になる臨場感あふれる内容でありながら、豊富なエビデンスを織り交ぜてあり一読すべき名書である。
推薦図書 北野夕佳 監訳.救急ポケットレファランス、初版.メディカル・サイエンス・インターナショナル、328p、2016年.
想定読者 ○実践者
解  説  救急診療は総合医が横断的に能力を発揮するフィールドの代表であり、内因性疾患だけではなく外傷、産婦人科、小児科などを含む幅広い症候、疾患に対して迅速に、安全に対応することが求められる。本書は救急診療で必要不可欠であるがすべて覚えこむのは難しい情報を簡潔かつ網羅的にポケットサイズにまとめていることが最大の特徴である。救急外来でことあるたびに本書を開き、確認することで、“洗練された簡潔な医学知識”が次第に身につき、型となり定着するはずである。
推薦図書 林寛之、Dr.林の当直裏御法度-ER問題解決の極上Tips70-、第1版、株式会社三輪書店、336p、2006年.
想定読者 ○実践者  ・  ○指導者
解  説  救急現場で遭遇する困った事例や、よくあるピットフォールが提示され、適宜解決策も記載されており、救急現場で必要な態度領域について学べるような内容である。しかも、理想論ばかりではなく実際の現場が苦境や不条理なことが多いことを明示された上での提言であり、読者としても思わず頷き、同意しながら読んでしまう内容になっている。
 救急現場での態度領域について学べる本が少ない中で、修羅場をくぐってきた筆者の経験と知恵が活字としてつまっており、プロフェッショナリズムの重要性を再認識させられる。まさに救急医療に携わる全医療職にとって必読の書であると考える。
推薦図書 行岡哲男・太田祥一・羽生春夫、地域とつながる 高齢者救急実践ガイド、第1版、南山堂、429ページ、2016年.
想定読者 ○初学者  ・  ○実践者  ・  ○指導者
解  説  救急医療に関する中でも高齢者にフォーカスしている著書である。高齢者によくみられる症状・疾患や診療のポイントだけでなく、専門医へのコンサルトのタイミング(入院治療の適応)、地域医療との連携、リハビリテーション、end of life care、在宅看取りについてまで記載しており、地域包括ケア時代の救急医療のあるべき姿を学べる。各論でも症例を通して疾患の説明をするだけでなく、プライマリ・ケアで必要なサポート、予防などまで記載されており、まさに地域医療、プライマリ・ケアを行う医師にとって必読の書である。
推薦図書 大滝純司監訳.齊藤裕之編集.マイナーエマージェンシー、原著第3版.医歯薬出版、876p、2015年.
[原著: Philip Buttaravoli, Stephen M. Leffler. Minor Emergencies 3rd edition. Saunders, 848p, 2012. ]
想定読者 ○初学者  ・  ○実践者  ・  ○指導者
解  説  救急外来では、幅広い領域のCommon diseaseを診療することが求められる。限られた時間・医療資源の中、初見で軽症に見える救急疾患から重大な見落としをしないためには高度な知識と技術が必要である。本書では鼻出血、結膜下出血、爪下血腫といった日常で遭遇しやすい、しかし系統的な教育を受ける機会が少ない疾患が網羅されている。各項目では疾患毎の「臨床像」「やるべきこと」「してはいけないこと」が豊富なイラストと共にコンパクトにまとまっており、忙しい診察中でも手順を確認しながら診察を進めることができる。マイナー症候・疾患に出会う度に、手にとって確認したい教科書である。
推薦図書 林 寛之.ステップ ビヨンド レジデント1-7.羊土社、2006年から刊行中.
想定読者 ○初学者  ・  ○実践者
解  説  ともすれば眠くなってしまうエビデンスを、ジョーク満載でおもしろおかしく学べる救急医療のパイオニア・林先生の名作シリーズ。初学者が失敗する場面から始まり、笑いと愛にあふれた解説、紹介文付きの使える文献リストで構成されている。知識や技術を身に付けるだけでなく、精神的・社会的問題にも対応できる医師になって欲しい、という著者の哲学が込められている。得られた知識や技術はinputするだけでなく、後輩にoutputすることで自分の財産にしていく生涯学習のスタイルを示してくれる。
推薦図書 横林賢一、市場稔久 編著.[改訂]レジデント技術全書―ER・急変時の検査と処置、これだけ、ここまで、第1版.株式会社シービーアール、291p、2015年.
想定読者 ○初学者  ・  ○実践者  ・  ○指導者
解  説  研修医の救急外来での診療能力を上中下で表すと、本書は「中の中」以上になることを目指した指南書である。第一部では、まずオーダーすべき採血項目や初期輸液の選択など、救急の現場でつまずきやすい「基本的な検査のオーダー・解釈の方法を知りたい」や「とりあえずの処置の方法を身に付けたい」というニーズに応えてくれる。第二部では、「後期研修を終了するまでにマスターして欲しい検査と処置」を臨床の第一線で活躍する中堅医師が解説している。救急外来でどう診療をしていいのか分からなくて困っている研修医だけでなく、困っている研修医にどう教えたら良いか悩んでいる指導医にもお勧めできる一冊である。
6-3. 病棟医療(徳田 安春)
推薦図書 徳田安春 編著.新・総合診療医学 病院総合診療医学編、第2版.カイ書林、474p、2015.
想定読者 ○初学者  ・  ○実践者  ・  ○指導者
解  説  病棟医療の実践についての教科書。総論、診断、治療について網羅的に記載されている。
推薦図書 青木眞 著. レジデントのための感染症診療マニュアル、第3版.医学書院、1600p、2015.
想定読者 ○初学者  ・  ○実践者  ・  ○指導者
解  説  総合診療病棟では感染症の診療を行うことが多い。この書籍は日本における感染症診療のバイブルである。
推薦図書 福井次矢、黒川清 監修.ハリソン内科学、第4版.メディカルサイエンスインターナショナル、3376p、2013.
(原著:Anthony Fauci, Stephen Hauser, Dan Longo, J. Jameson, Joseph Loscalzo Dennis Kasper. Harrison`s Principles of Internal Medicine 19th edition. McGraw-Hill Professional, 3184p, 2015.)
想定読者 ○初学者  ・  ○実践者  ・  ○指導者
解  説  内科診療の教科書。症候学の内容は鑑別診断に役に立つ。標準的な診療を行うために役立つ 。
6-4. 在宅医療(木村 琢磨)
 
推薦図書 在宅医療テキスト編集委員会.在宅医療テキスト、第3版、公益財団法人 在宅医療助成 勇美記念財団、2015.
想定読者 ○初学者  ・  ○実践者
解  説  本書は、在宅医療全般に関して、初心者でも理解しやすく実践的な内容が多く記載されている。総合診療医を志向した後期研修として在宅医療を開始した時期は、まずは本書を参照しつつ、必要に応じて成書を調べることをおすすめしたい。
 本書は、勇美記念財団より無料で取り寄せることが可能である上に、勇美記念財団のホームページ(http://www.zaitakuiryo-yuumizaidan.com/main/text.html#text)より無料ダウンロードが可能であり非常に有益である。さらに、章毎に解説動画もあり無料視聴可能である。スマートフォンからも視聴可能なため、いつでも、どこでも学習でき、DVDを無償で借りることもできるため勉強会などにも利用できる。
推薦図書 日本緩和医療学会緩和医療ガイドライン作成委員会.がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン、金原出版株式会社、2014.
想定読者 ○初学者  ・  ○実践者
解  説  在宅医療の実践には、様々な知識・技能・態度が求められるが、疾患・領域別では、まず初心者は「がんに関する臨床能力」を習得するべきである。「がんに関する臨床能力」としては、総合診療医は、様々な症状緩和、心理社会的な側面へのアプローチなど多くを習得する必要があるが、疼痛管理に関する能力は必須である。在宅医療を始めたばかりの時期は、本書で標準的な疼痛管理について、まず学ぶことが有益である。
 本書も、日本緩和医療学会のホームページより無料でダウンロードが可能である(http://www.jspm.ne.jp/guidelines/pain/2014/pdf/pain2014.pdf)。
推薦図書 平原 佐斗司.医療と看護の質を向上させる認知症ステージアプローチ入門―早期診断、BPSDの対応から緩和ケアまで、中央法規出版、2013.
想定読者 ○実践者  ・  ○指導者
解  説  在宅医療で取り組むべき疾患領域は多岐に渡るが、今後、我が国で進展する超高齢社会における中心的課題のひとつである認知症の臨床は、後期研修で必ず研鑽すべきであり、認知症の臨床において在宅医療の果たす役割は大きい。総合診療医には、「ステージにより臨床アプローチが大きく異なる認知症に、地域において外来・在宅・施設で継続的に関わること」、「本人はもちろん介護者も含めたアプローチを実践すること」が求められている。
 本書は、在宅医療のみについて記載された本ではない上に、決して容易な内容ではないが、認知症患者に対して外来・在宅と継続的にアプローチし、本人・家族・多職種を念頭に包括的にケアする精神にあふれており、研修の参考になるであろう。
推薦図書 川越 正平 (編著).在宅医療バイブル―家庭医療学、老年医学、緩和医療学の3領域からアプローチする.日本医事新報、2014.
想定読者 ○実践者  ・  ○指導者
解  説  総合診療の後期研修中のみで、在宅医療全般に渡る経験・研修は到底できないが、「本来、在宅医は様々な臨床課題へどう取り組むべきか」について、研修中に理解しておくことが望ましい。
 本書は、その名の通り、家庭医療学、老年医学、緩和医療学から在宅医療を学問的かつ実際的に捉えている。在宅医療の研修中に、標準的なテキストやガイドラインなどで臨床上の疑問が解決されない際に参考にすると役立つであろう。

(本リストの改訂について)
 このリストの作成にあたっては、各領域の先駆者たちが自信を持って書籍・文献を推薦していますが、最近の医療情勢を反映して、総合診療領域においても急速に関連書籍が増えています。そこで、このリストを完成形とはせず、適宜ブラッシュアップしていく方針です。つきましては、本リストに追加するのにふさわしい書籍・文献の他薦を受け付けますので(自薦不可)、書誌情報、想定読者、解説とともに本部事務局までお知らせください。なお、リストへの掲載につきましては本学会にご一任ください。ご協力をよろしくお願いいたします。